ごきげんよう、式部です。
先日4人の直木賞作家による「はじめての」短編集を読んだので、
今回はその感想です。
本のネタバレを含む可能性があるので、
気になる方はここで閉じて下さい。
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概要
島本理生・辻村深月・宮部みゆき・森絵都の4人の直木賞作家による、
「はじめて」をモチーフにした短編集。
島本理生・・・はじめて人を好きになったときに読む物語「私だけの所有者」
辻村深月・・・はじめて家出したときに読む物語「ユーレイ」
宮部みゆき・・・はじめて容疑者になったときに読む物語「色違いのトランプ」
森絵都・・・はじめて告白したときに読む物語「ヒカリノタネ」
島本理生「私だけの所有者」
ある施設に保護されたアンドロイドの「僕」が所有者との間に何があったのか、
手紙形式で明らかになっていく物語。
個人的に1番好きでした。
アンドロイドの「僕」とその所有者の「愛情」が描かれていましたが、
「愛情を伝える」「愛情が伝わる」という事がこんなに難しい事なのか、
と涙しました。
ここでの「僕」はアンドロイドですが、
まるで人間のように描かれていたのも新鮮でした。
ストーリー自体は違いますが、
カズオイシグロの「わたしを離さないで」を彷彿させられました。
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辻村深月「ユーレイ」
学校でのトラブルが原因で家出をし、遠く海沿いの駅に来た私。
自殺を考えていた私は、まるで「ユーレイ」のような不思議な少女に声をかけられる。
少女の「ユーレイ」のような存在感によって
中盤まで儚さを含んでいた物語が、
まさかのオチでクスッと笑えるような物語になったのがとても面白かった。
「生きていればきっと良いことがある」「地球のどこかに味方がいる」
というメッセージとも思えるような物語で、
少し前向きになれた気がした。
宮部みゆき「色違いのトランプ」
平行世界で起きたテロへの関与を疑われ、身柄を拘束された娘の夏穂を取り返す為、
宗一はもう1つの”鏡界”へと向かい、娘と対面する。
娘の夏帆の話から、
この平行世界では、同じ人間でもまるで違う人間であるかのように、
世界が変われば性格が異なる事が分かる。
皆1度は考えた事があるだろう、平行世界の自身の事を。
今自分が見ている世界は平行世界もしくは分岐の1つであり、
様々な可能性がある事。
その中で世界の掛け違いをしてしまったかも知れない、そんな物語だった。
どんな娘でも受け入れていくという親としての覚悟を感じる物語でもありました。
森絵都「ヒカリノタネ」
幼馴染の椎太が好きな高校生の由舞は、
4回目の告白を臨むにあたって、
タイムトラベルができる謎の女性に依頼し、
過去3回の告白を無かった事にしようとする。
私はあまり森絵都さん詳しくないのですが、
タイムトラベルが出てきた時点で何となく森絵都さんっぽいなぁと感じました。
確か「カラフル」も主人公が魂の存在になっていた気がします。
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今回の物語は全体的に明るく、泥臭く奮闘する由舞を応援したくなりました。
同じ人に4回も告白しようとする度胸にガッツを感じました。
4回目だからこそ「成功させたい」と告白を怯んでしまうのも、
とてもかわいいですね。
「無駄なものなど1つもない」「過去の選択だった自分の一部」
と感じる事のできる物語でした。
まとめ
同じ「はじめて」というテーマでも切り口が全く異なっていて、
それぞれのカラーを感じる事ができました。
短編なので、すらすら読めるのも良かったです。
読書に対して苦手意識のある方は、
辻村深月さんと森絵都さんの作品などとても読みやすいと思います。
それでは、、