ごきげんよう、式部です。
先日2月24日に椎名林檎のアルバム『無罪モラトリアム』発売から25周年が経ちました。
という事で、今回は改めて『無罪モラトリアム』を聴いていき、自分なりの感想などを述べたいと思います。
発売当時の事など知らない事も多いので、随時Wikipediaページ 無罪モラトリアム - Wikipedia
などwebサイトを参考にしています。
概要
発売日:1999年2月24日
収録時間:41分00秒
椎名林檎ファーストアルバム。10代の頃に制作された曲で構成されたアルバムとなっている。
アルバムコンセプト
人として真面目に生きていこうとする以上、社会に適合できないモラトリアムな瞬間はきっと誰にでもあり、それも無罪であると主張したいという思いが込められている。
アートワーク
ジャケットデザイン・アートディレクター:木村豊
ジャケット写真を自分が完全に浮いてしまっている場所で撮りたいと思っていた椎名林檎が「裁判所などで弁護士が『無罪』や『勝訴』という文字が書かれた幡(ハタ)を関係者たちに囲まれて掲げているところに自分がポツンといたら面白いのでは」というアイデアを出し撮影された。
幡の題字は椎名林檎本人の字。
レコーディングについて
シンプルなバンドサウンドで、主に2つのバンドを編成し使いわける手法。楽曲に応じて、必要なストリングスなどを追加している。
基本的には「バンド演奏による一発録り」で現場のセッション形式を、そのままパッケージ化。
絶倫ヘクトパスカル
声、生ドラム(M-2)、手、口笛:椎名林檎
電気式ギター、生ギター:西川進
電気式ベースギター:亀田誠治
生ドラム(M-1、3-11)、超え、手:河村智康
→M-1、2、4、6、8、11
桃色スパナ
声、なんちゃって御琴、口笛:椎名林檎
電気式ギター、生ギター、声指導:鈴木玲史
電気式ベースギター:亀田誠治
生ドラム、すべからくコンガ:河村智康
→M-5、7、9、11
絶叫ソルフェージュ
声、生ピアノ、けんばんハーモニカ、手足:椎名林檎
電気式ベースギター、声:亀田誠治
生ドラム、声、手足:河村智康
→M-3
ゲスト
ヴァイオリン(M-9):斎藤ネコ
電子ピアノ(M-8):矢代恒彦
収録曲
MV
感想
全体を通して
やはり椎名林檎10代の集大成アルバムであるため、少女が女性になる間、その葛藤みたいなのを感じる。
又、上京物語のようなものも感じ、「正しい街」=地元(福岡)で別れを経験し、
歌舞伎町で声を掛けられたり、丸の内で安月給で働いたり、
想像していたような東京ではなく、
自己実現できない自分に焦燥感を感じながら、地元にいた頃と「同じ夜」を繰り返す。
というストーリーを連想してしまいます。
M-1:正しい街
「君が周りを無くした~」というBメロから入ってくる警告音のようなギター?の音が滅茶苦茶好きです。
歌詞も相まってお互いのエゴをぶつけあう様子が、この音によって強調されているように感じます。
M-2:歌舞伎町の女王
イントロや歌詞から昼ドラが始まったかのような雰囲気が特徴的です。
椎名林檎のストーリーライター的な能力が光る1曲だと思います。
イントロなど特徴的なリフをギターが引っ張り、Aメロでベース、Bメロあたりからドラムが乗ってくるという構成。
M-3:丸の内サディスティック
初めて聴いた時、サディスティックとタイトルについているのに、
逆にマゾヒスティックな曲じゃないか!!と若干憤っていました。
只、丸の内マゾヒスティックだと格好つかないし、丸の内という街やそこでの生活に鞭うたれているという意味のサディスティックなのかな、と勝手に解釈しています。
間奏のベースソロ痺れます。。
M-4:幸福論-悦楽編
とにかく歌詞が可愛い。シングルとは異なるアレンジでアルバム収録されていますが、個人的にはシングルの方が可愛らしくて好きです。
謎の絶叫やカウントが終盤で入るのだが、少し狂気的にも聴こえる。
”悦”楽とついているように、自己満足な幸福(悦に浸っている状態)を表現しているのかも知れない。
M-5:茜さす 帰路照らされど...
アルバムの中でこの曲が1番好きって方も多いのではないかと思う。
「ヘッドフォンを耳に充てる ファズの利いたベースが走る」という歌詞が、リスナーとリンクする二重構造のようになっていて面白い。
又、歌詞も曖昧な表現しかなく、様々な人に当てはまるようになっている。
とにかくなんとなく切ない、ゆっくりと沈む夕焼けのような曲。
M-6:シドと白昼夢
個人的にはかなり好きな曲。
同アルバム『同じ夜』の歌詞内に「自己実現」という言葉が出てくるが、
この曲こそ「自己実現」を表した曲ではないか?と思う。
子どもの頃って何となく夢見がちで、他人と自分の境界が曖昧であるが、
思春期を通じて自己の輪郭が見えてくる。
自己と他者の違いを認識する。
サビの「あなたの髪を切らなきゃ」は早く白昼夢から抜け出せ、と言われているようにも聴こえます。
M-7:積木遊び
ベースイントロと間奏部分のなんちゃって御琴(シンセサイザー)が格好良い。
LIVEでも振付あったり、音作りや歌詞も遊び心に溢れており面白い楽曲。
なんとなく芸者さんの遊びを連想させます。
M-8:ここでキスして。
全体を通して可愛らしい歌詞ですが、特に1番Aメロ2番Bメロの歌詞が好きです。
1番A「あたしは絶対あなたの前じゃ さめざめ泣いたりしないでしょ
これはつまり常に自分がアナーキーなあなたに似合う為」
2番B「そりゃ あたしは綺麗とか美人なタイプではないけれど こっち向いて」
ちょっと自信のない感じや強がり、背伸びしている感じが伝わってきて可愛いです。
又、「アナーキーなあなた」「現代のシド・ヴィシャス」などのワードから、あなたの性格に想像を膨らませる事もできます。
M-9:同じ夜
ヴァイオリンの音による哀愁やノスタルジーを感じる1曲。
「空は明日をはじめてしまう 例えあたしが息を止めても」という諸行無常が描かれており、同じ夜の中で変化する人間の心のうつりかわりにハッとする1曲です。
M-10:警告
ギターのリフが格好良い、
最後のワンフレーズ「「馬鹿にしないで」って云いたい」が、山口百恵さんの「プレイバック」を連想してしまいます。
M-11:モルヒネ
モルヒネは、アヘンから生成される麻薬性鎮痛薬の事であり、主に医療行為で使われます。麻薬の1種であるため、製造や使用方法、所持についても法律で決められています。
やわらかな曲調とは対照的に、意味深なタイトルや歌詞。
様々な解釈のできる歌詞ですが、脳の中に麻薬物質を排出する事で、なんらかの「痛み」を鈍らせているという事だけ理解できます。
個人的解釈としては、「大人の女性になった曲」もしくは「貴方の自殺」ではないかと考えています。
(※正解は作った本人にしか分かりませんし、それぞれ好きな解釈で良いと思います。)
改めて
改めて全体を通してしっかり聴いてみると、新しい発見や今までとは違った解釈ができて楽しかったです。
特にアルバムの終盤に入っている『同じ夜』『モルヒネ』などは、なんとなく良い曲だなぁと聞き流しがちだったので、今回しっかり歌詞カードを見ながら聴いてみて、また曲の印象が変わりました。
それでは、、
P.S
『無罪モラトリアム』発売25周年を記念して書かれたインタビュー
発売から25年。椎名林檎『無罪モラトリアム』はなぜ衝撃と呼ばれたのか─亀田誠治が語る「ないがち」な革命 | J-WAVE NEWS では、アルバム制作を一緒に行った亀田さんからの視点が語られていて、ほっこりします。